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idlepop/LITZHAUS
2004/6/22

Lo-Fiエフェクタ


 数あるエフェクターの中でアナログ的に一番簡単に作れるものが、ディストーションやオーバードライブ、ファズなどの「歪系」のエフェクターです。
近代音楽には欠かせないこれらのエフェクターですが、これらの音をデジタルで再現するのはとても難しいようです。最近のDTM音源にはこの手のエフェクターを内蔵しているものもありますが、実際に鳴らしてみると違う感じがしませんか?ファズやオーバードライブにある、「今にもはじけそうな際どさ、不安感」がぜんぜんないと思いませんか?
 そんなわけで、オーバードライブ&ファズを作ってみました。


歪み系エフェクターとは?

 ファズやオーバードライブといったエフェクターは、その昔は単体で存在するものではありませんでした。もともと、ギターやアンプのボリュームを最大にしてアンプそのものを歪ませる・・・というものだったのです。当時のアンプといえば、真空管全盛期で出力も高々数ワット〜数十ワット程度のものがほとんどでした。ですから、ボリュームを上げるとすぐにアンプの動作範囲を超えて歪み始めるというありさまでした。
さて、そんなオーバードライブサウンドの人気が出てくると、「ボリュームを上げなくてもオーバードライブするものはないのか?」という需要が出てきました。それはいくら出力が少ないといっても、年がら年中アンプのボリュームを最大にしておくわけにはいかなかったからです。それに、オーバードライブはアンプそのものにも負担がかかり、真空管の寿命をみじかくします。
 そこで登場したのがファズというエフェクターです。これは、回路上で動作範囲の超えたアンプを再現してしまうエフェクターです。特に当時のファズはどれも凶悪ですばらしいものでした。そのようなファズサウンドの代表選手といえば、伝説のギタリスト、ジミ=ヘンドリックスではないでしょうか?(詳しくは、ロックお父さんに聞いて下さい。)
 その後、もっときれいに歪む、和音が弾ける、もっと鋭く・・などニーズにあわせてオーバードライブやディストーションなどの変種が登場していきました。


動作原理

 今回制作するものは、ディストーションというよりファズです。いや、ファズというよりは、レベルを間違えてサンプリングした古いサンプラー・・・ゲイン最大で録音したMTR、などのような音を出すものです。
回路の動作は至って簡単です。まずはじめに、入力された信号は思いっきり高ゲインのアンプに入ります。すると自然に歪みます。・・・というか、電源電圧付近でクリップしてしまいます。これは、増幅回路の基本で、「電源電圧以上の出力は出ない」ということです。
 今回はこの高ゲインアンプにフィードバック型のトーンコントロールと、出力用バッファを組み合わせた簡単なものです。


回路図

 可変抵抗はすべてAカーブを使用してください。コンデンサは電源以外はフィルム(マイラ)型をお勧めします。ダイオードは普通のものなら何でもいいです。
 OPアンプはデュアルのオーディオ用でしたら大体大丈夫です。5532がお勧めですが、4558、TL072、LF412・・・などなどで動作しています。また、OPアンプによって音質が変わるので、それを楽しむという手もあります。(ちなみに5532は入力インピーダンスが低いので前段にドライブ能力の低いもの(ギターやマイクなど)をつなぐと特性がかなり変化します。気に入らない場合は4558などを使ってください。ちなみに、ヴィンテージエフェクタにはこのような回路(つまり、つなげる機材によって音質がころころ変わる)が結構あります。)
 電源は+片電源で動作します。2電源で使用したい場合は、OPアンプの+入力をGNDに接続してください。
 また、電源電圧が低いとノイズっぽくなるかもしれませんまた、ACアダプターでも動きますが、ハムが出るかもしれません。
 入力端子から、基盤まではシールド線を使用してください。また、箱につめる場合は、箱のアースは「一点」でとったほうがいいです。シールド線のシールドはINの端子側を半田し、基盤側は繋がない。OUTのシールドは端子側も基盤側も接続する。箱のアースはこの一点だけにする。電源端子のアースがあっても、箱には接続しないほうがいい。



試作品

試作品の外観

波形の変化
元波形加工後1加工後2
加工後3加工後4

ちょっとボロイ箱に入っていますが、現物です。三角波を入力すると、台形波から、エッジの丸まった矩形波〜完全な矩形波まで変化します。ちなみにこのエフェクターは動作原理上、入力した器材のS/N比が低いとかなりノイジーです。特にドライブ・トーンを最大にすると、入力されたノイズがかなり増幅されて出力されます。そのため、ノイジーなソースを使う場合はノイズゲートがないと厳しいかもしれません。また、ライン入力以外にも、ギター、ベースなどでも動作するようです。


2004/6 補足

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